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咲織さん、仕事が速いです。GOOD!
さてついに始まった殺人事件。遥奈は流されるままに状況に運ばれてきます。ここから遥奈は自分がどう動くべきか決めていかなければなりません。遥奈はこの事件をどうとらえるのかっ!?
次回は蝦彌永さんになります。受け渡しを確認したときは、コメントに一言その旨を書いておいてください。
≪ここまでの粗筋~
招かれた天才の一人、息吹かなみが首切り死体となって発見された。異常事態にざわめく鴉の濡れ場島。
館の主である赤神イリアは、屋敷で全員のアリバイを確認することを提案する≫
『7段目:花宴咲織』
『では次に遥奈さん、御願いします』
イリアさんがそういって、全員が私を見たというわけではないけれど、全員が私に意識を向けた。
私が今からアリバイを言わなければならないのだ。
さてついに始まった殺人事件。遥奈は流されるままに状況に運ばれてきます。ここから遥奈は自分がどう動くべきか決めていかなければなりません。遥奈はこの事件をどうとらえるのかっ!?
次回は蝦彌永さんになります。受け渡しを確認したときは、コメントに一言その旨を書いておいてください。
≪ここまでの粗筋~
招かれた天才の一人、息吹かなみが首切り死体となって発見された。異常事態にざわめく鴉の濡れ場島。
館の主である赤神イリアは、屋敷で全員のアリバイを確認することを提案する≫
『7段目:花宴咲織』
『では次に遥奈さん、御願いします』
イリアさんがそういって、全員が私を見たというわけではないけれど、全員が私に意識を向けた。
私が今からアリバイを言わなければならないのだ。
もっともそれは、不可能かもしれない。
だって、私にはアリバイがないのだから。
「夕食をとった後にシャワーを浴びました。その後に、少し部屋で過ごした後、なんとなくリビングへ行っていーちゃんと玖渚さん、深夜さん、そして真姫さんとお話しました。
地震が起きたとき、私も其処にいましたから、そうですね………1時くらいですか。その頃もいました。
深夜さんがかなみさんに連絡を取った後、私はその場から退散して寝ました」
「ずいぶんと早いご就寝ですね」
「………そうですか?」
イリアさんの思いもよらない発言に、驚きつつなんとか反応する。
1時過ぎ、って早いのかな?
「少し考え事をしていましたから、寝たのは2時近くだと思います」
「考え事?」
「はい」
考え事の内容は聞かれなかったし、答えない。
聞かれもしないことに答えるほどサービスはよくないし、それ以前に今のこの状態があまり好きではない。
人が殺された以上、アリバイを聞くのは当然だろうけど………この状態は、魔女裁判だと思う。(魔女裁判のことを具体的には知らないけど)
この後全ての人に話を聞いて――最後の一人、園山赤音さんだけがアリバイがないということになった。
いや、私もアリバイがない、になるのかもしれない。
「伊吹さんは誰かに殺されたんです。そしてこの場合の誰かとはこの場にいる誰か、という意味でしょう?
貴方の言うとおりですよ。ここはわたくしの島で、わたくしの屋敷です。その中でわたくしの招待したお客様が殺されて、その中に殺人犯がいるのですよ?
まさか放置しておくわけにはいきませんでしょう?」
イリアさんは微笑を浮かべてそういった。
何を考えているか、私にはわからなかった。
「結局かなみさんが殺されたのは、地震前、でいいんですか?」
進んでいた話に聞いてはいたけど途中参加、のように私は言った。
「そうですね」
「それで、赤音さんが犯人だと?」
「そうですね。だって、彼女のほかいないじゃないですか」
そうあっさり認めたイリアさん。
「では………地震前いつまでなら、アリバイとして認められるんですか?」
イリアさんは私が言った意味が解らない、といった表情を一瞬浮かべた。
いや、一瞬ではなく今も浮かべている。
「すみません、えーとなんていうか………自分で言うのもあれかと思いますけど。
私だって地震前の時間すべてにアリバイがあるわけではありません。だから………」
「つまり、貴女は自分にアリバイがないと?」
自分で自分にアリバイがないことをいうのもあれだけど、でもこういうフェアじゃないことは好きじゃないから。
いーちゃんが“確証バイアス”とか難しい言葉の説明とかしてたけど、それは私にもさっぱりというか理解する気がないから理解できもしない。
どちらにせよ、私の発言はイリアさんにとっては大したものでもなく、赤音さんが犯人、という風になっている。
赤音さんとかなみさんの仲がよくなかったことが決定打、ということだ。
私の場合は、仲が良い悪いの前にかなみさんにそんなにあっていないから容疑者としては外れているらしい。
そして、いーちゃんが画期的(なのかな?)な提案をした。
赤音さんを保護と言う名の隔離しよう、ということだ。
「はぁ………」
「どうしたの、ハルちゃん。具合でも悪い?」
いーちゃんが声を掛けてくれた。表情は全く持って普通だけれど。
「いえ。ただ、一つ………より正確に言えば7個以上ですけど、考え事をしているだけです」
「へぇ」
「皆さんに尋ねてもいいですか?」
解散しかけているところに声を掛ける。
私が引きとめた形だ。
「なにかしら? もうお話は終ったと思いましたが」
イリアさんが怪訝そうに訊ねてくる。
メイドさんたちは表情に出しはしなかったが空気的にはイリアさんと同じ。
深夜さんは『これ以上話をするのか』という表情で弥生さんは『なんだろうか』、真姫さんはわかりきったような表情、赤音さんと玖渚さんの表情は読めない。
「ここでこういう質問を出す、というのはすべての前提をひっくり返してしまうようなんですけど。
ですが、それ以前に私がほとんどの人に会っていなかったということを考慮していただけると嬉しいですが」
「言いたいことを完結にしていただけると嬉しいですわ」
確かにそうだろうが、私の事情も知ってもらわないといけない。
まぁこういう人たちには関係ないかもしれないが。
「あれは………本当にかなみさんでしたか?」
「どういうことでしょう? 彼女以外にいないでしょう?」
「消去法ではかなみさん以外にいないと思います。てか彼女でしょう。
でも、私はかなみさんとあまり会っていませんし、深夜さんがかなみさんだと認めたということは彼女だと思うんですが………」
「つまり、あれは伊吹さんではないかもしれない、と?」
「簡単に言えば。でも、まぁこの場に全員そろっていることを考えれば、彼女だと思うんですけど。
あれが彼女だと………伊吹かなみだと認識していいんですね?」
「ええ、構わないわ。でなければ、今まで話したことすべてが不意ですもの」
◇ ◆ ◇
「君は面白いことを言うね」
真姫さんが面白そうにそういってきた。
「そうですか? 私はそうは思いませんけど」
「自分にアリバイがないことを主張したり、物事の根本を揺るがすことを言ったり………いやはや、キミには飽きないよ」
「ありがとうございます」
誉められたのか解らないが、多分誉められた。うん、きっと誉められたんだろう。そういうことにしておこう。
「ただ………不可解だね」
「? 何がでしょうか」
すべてを見通す、という真姫さんが不可解なこと。
私に対して不可解なのか、事件に対してなのか解らなかったが、どちらにせよ大差はないだろう。
「キミのその思考回路だ。考えていることは解るのに、その根本にあるものがわからない。
キミが何故その思考をし、その結末に至ったのかというものが読めないのだよ」
「? 私は自分が疑問に思ったことを考えるだけですけど………」
「では、君は自分が何故そのことを疑問に思ったのか、理由付けができるかい?」
真姫さんのその質問に、私は考えた。
じっくりと、何回も反芻しながら考えた。
そして。
「“私が疑問に思ったから”です」
了
『7月26日。8段目:蝦彌永さんへ』
だって、私にはアリバイがないのだから。
「夕食をとった後にシャワーを浴びました。その後に、少し部屋で過ごした後、なんとなくリビングへ行っていーちゃんと玖渚さん、深夜さん、そして真姫さんとお話しました。
地震が起きたとき、私も其処にいましたから、そうですね………1時くらいですか。その頃もいました。
深夜さんがかなみさんに連絡を取った後、私はその場から退散して寝ました」
「ずいぶんと早いご就寝ですね」
「………そうですか?」
イリアさんの思いもよらない発言に、驚きつつなんとか反応する。
1時過ぎ、って早いのかな?
「少し考え事をしていましたから、寝たのは2時近くだと思います」
「考え事?」
「はい」
考え事の内容は聞かれなかったし、答えない。
聞かれもしないことに答えるほどサービスはよくないし、それ以前に今のこの状態があまり好きではない。
人が殺された以上、アリバイを聞くのは当然だろうけど………この状態は、魔女裁判だと思う。(魔女裁判のことを具体的には知らないけど)
この後全ての人に話を聞いて――最後の一人、園山赤音さんだけがアリバイがないということになった。
いや、私もアリバイがない、になるのかもしれない。
「伊吹さんは誰かに殺されたんです。そしてこの場合の誰かとはこの場にいる誰か、という意味でしょう?
貴方の言うとおりですよ。ここはわたくしの島で、わたくしの屋敷です。その中でわたくしの招待したお客様が殺されて、その中に殺人犯がいるのですよ?
まさか放置しておくわけにはいきませんでしょう?」
イリアさんは微笑を浮かべてそういった。
何を考えているか、私にはわからなかった。
「結局かなみさんが殺されたのは、地震前、でいいんですか?」
進んでいた話に聞いてはいたけど途中参加、のように私は言った。
「そうですね」
「それで、赤音さんが犯人だと?」
「そうですね。だって、彼女のほかいないじゃないですか」
そうあっさり認めたイリアさん。
「では………地震前いつまでなら、アリバイとして認められるんですか?」
イリアさんは私が言った意味が解らない、といった表情を一瞬浮かべた。
いや、一瞬ではなく今も浮かべている。
「すみません、えーとなんていうか………自分で言うのもあれかと思いますけど。
私だって地震前の時間すべてにアリバイがあるわけではありません。だから………」
「つまり、貴女は自分にアリバイがないと?」
自分で自分にアリバイがないことをいうのもあれだけど、でもこういうフェアじゃないことは好きじゃないから。
いーちゃんが“確証バイアス”とか難しい言葉の説明とかしてたけど、それは私にもさっぱりというか理解する気がないから理解できもしない。
どちらにせよ、私の発言はイリアさんにとっては大したものでもなく、赤音さんが犯人、という風になっている。
赤音さんとかなみさんの仲がよくなかったことが決定打、ということだ。
私の場合は、仲が良い悪いの前にかなみさんにそんなにあっていないから容疑者としては外れているらしい。
そして、いーちゃんが画期的(なのかな?)な提案をした。
赤音さんを保護と言う名の隔離しよう、ということだ。
「はぁ………」
「どうしたの、ハルちゃん。具合でも悪い?」
いーちゃんが声を掛けてくれた。表情は全く持って普通だけれど。
「いえ。ただ、一つ………より正確に言えば7個以上ですけど、考え事をしているだけです」
「へぇ」
「皆さんに尋ねてもいいですか?」
解散しかけているところに声を掛ける。
私が引きとめた形だ。
「なにかしら? もうお話は終ったと思いましたが」
イリアさんが怪訝そうに訊ねてくる。
メイドさんたちは表情に出しはしなかったが空気的にはイリアさんと同じ。
深夜さんは『これ以上話をするのか』という表情で弥生さんは『なんだろうか』、真姫さんはわかりきったような表情、赤音さんと玖渚さんの表情は読めない。
「ここでこういう質問を出す、というのはすべての前提をひっくり返してしまうようなんですけど。
ですが、それ以前に私がほとんどの人に会っていなかったということを考慮していただけると嬉しいですが」
「言いたいことを完結にしていただけると嬉しいですわ」
確かにそうだろうが、私の事情も知ってもらわないといけない。
まぁこういう人たちには関係ないかもしれないが。
「あれは………本当にかなみさんでしたか?」
「どういうことでしょう? 彼女以外にいないでしょう?」
「消去法ではかなみさん以外にいないと思います。てか彼女でしょう。
でも、私はかなみさんとあまり会っていませんし、深夜さんがかなみさんだと認めたということは彼女だと思うんですが………」
「つまり、あれは伊吹さんではないかもしれない、と?」
「簡単に言えば。でも、まぁこの場に全員そろっていることを考えれば、彼女だと思うんですけど。
あれが彼女だと………伊吹かなみだと認識していいんですね?」
「ええ、構わないわ。でなければ、今まで話したことすべてが不意ですもの」
◇ ◆ ◇
「君は面白いことを言うね」
真姫さんが面白そうにそういってきた。
「そうですか? 私はそうは思いませんけど」
「自分にアリバイがないことを主張したり、物事の根本を揺るがすことを言ったり………いやはや、キミには飽きないよ」
「ありがとうございます」
誉められたのか解らないが、多分誉められた。うん、きっと誉められたんだろう。そういうことにしておこう。
「ただ………不可解だね」
「? 何がでしょうか」
すべてを見通す、という真姫さんが不可解なこと。
私に対して不可解なのか、事件に対してなのか解らなかったが、どちらにせよ大差はないだろう。
「キミのその思考回路だ。考えていることは解るのに、その根本にあるものがわからない。
キミが何故その思考をし、その結末に至ったのかというものが読めないのだよ」
「? 私は自分が疑問に思ったことを考えるだけですけど………」
「では、君は自分が何故そのことを疑問に思ったのか、理由付けができるかい?」
真姫さんのその質問に、私は考えた。
じっくりと、何回も反芻しながら考えた。
そして。
「“私が疑問に思ったから”です」
了
『7月26日。8段目:蝦彌永さんへ』
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