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ナンダカンダで第四話になります。
なつみさんお疲れ様です。
さぁついに事件の始まりです!

≪これまでの粗筋~
遥奈は自分の才能の答えを探しながら島での2日目を過ごす。
夜、姫菜真姫の話を聞いていると地震がある。地震のために話は打ち切られ、遥奈は部屋に戻って眠った≫



                                                  『六段目・伊東なつみ』
 朝だ。
「今日はちょっと早いなぁ。5時半だ。」
 昨日の事について、しばらく考えてみた。
 イリアさんの言葉、『あなたは無自覚の天才だからよ。』なんなんだ?無自覚って。しかしどうして誰も詳しく教えてくれないのだろう。それに無自覚に天才って有りなの?

結局なにも分からずに30分も考えてしまった。
「はぁ・・・何のことかくらい教えてくれてもいいのになー。」とブツブツ呟きながらそのままでいたけれど、考えっぱなしになってもしかたないので、少し身体を動かすために散歩をすることにした。
そしてまた島を一周し屋敷の前まで帰ってきたところで、扉の前に人の姿を見つけた。
ちょっと予想できたけど、どうやら間違いじゃない。
まただ。いーちゃんだ
「おはようございます。いーちゃん」
「おはよう。ハルちゃん」
「てゆうかいーちゃんは散歩するのが日課なんですか?」
「そういうハルちゃんこそ日課なの?」
「別にそういったわけではありませんよ。そんなお婆ちゃんみたいな日課なんて」
「ははは。ぼくもハルちゃんと同じ意見だよ。」
「てゆうかお互いそのあだ名、やめにしません?」
「そうだね。なんて呼ぶ?」
「んー。そうですね・・・考えてみると悩みます。」
「別にぼくは悩まないよ」
「何でですか?」
「それはあだ名がたくさんあるからだよ」
「たとえば?」
「いの字、いーいー、いっくん、戯言遣いのお兄ちゃん、いー兄、いーたん……などたくさんあるからね」
「へぇ。そうなんですか」
「それにぼくは君を『遥奈』ちゃんってなるべく呼びたくないんだよ」
「何でですか?」
「言わないよ」
「そうですか」
などと会話を繰り広げているとイリアさんが慌てたようにこちらに走ってきた。
「おはようございます。イリアさん」
「おはようございます。永久咲さん」
「あの、どうかしたんですか?」
「え……と……かなみさんが……殺されています」
「え…じゃあすぐに行った方がよさそうですね。急ぎましょう」
こういう事は何回か経験したことがあり、私はあまり焦らなかった。その死体を見るまでは。

・  ・  ・

それは、凄惨な光景だった。
気味の悪いマーブル色の川が、かなみさんのアトリエ、そのこちら側の半分に描かれていた。たぶんペンキかなんかだろう。
昨日の地震で倒れたのだろう。鉄パイプの棚が倒れている。
もっと凄いのは、向こう岸だった。それは推測なんて出来ないし、まさかこんなことが地震で起こるはずもない。
首斬り死体。
首のない、死体だった。
その頭のない死体が着ていた服は、昨日かなみさんが着ていたドレスだった。
そのきれいなドレスは血に、まみれていた。白いドレスは、赤黒く、なっていた。
「……」私は何も言えなかった。
シンナーの匂い。あさっての方向を向いた車椅子と、一枚のカンバス。
どうやら描かれているのはいーちゃんのようだ。それは、見事な、出来栄えだった。
私には芸術というものはイマイチよく分からない。でも、確かに、かなみさんの絵が上手い、という事は分かった。
多分、ここにいる人は皆こう思うだろう。犯人以外は。かなみさんの死を。伊吹かなみさんの死を、惜しい、と思っただろう。
皆、無言だった。仕方ない。
「とりあえず、このままにしておくって訳にはいきませんよね。」
怖い。コワイ。恐い。だけど…
私はなぜか、玖渚さんを見た
玖渚さんは、なんだか不思議そうにかなみさんを見ていた。
なにか納得がいかないことでもあるのだろうか。
私が一歩踏み出そうとしたときに
「ハルちゃん、ちょっと待って。」いったいどうしたんだろう。
「あ・・。どうかしましたか?」
「ペンキ、乾いてないよ。」昨日の出来事(?)だ。まだペンキは乾いていないだろう。
「ですね。でもそんな事言ってる場合じゃないですし。」別に気にしてないように、一歩でようとした。
「ちっちっち。ハルちゃんがそんな事するのは、あまりいいことじゃないからこういうときはいーちゃんにやってもらわないと」
「そうなんですか?」
「そうなのだよ」
「そうですか。じゃあいーちゃんお願いしますね」
「・・・・うん。わかったよ」
「いーちゃんちょっとまってね」
「え・・・うん」
玖渚さんは黒い、コートを脱いでペンキの川の真ん中辺りに投げた。川に飛び石が置かれた形になる。
「・・・思い出のコートじゃなかったのか?」そうなんだ。
「時と場合には変えられないからねー」
自分の《大切な思い出》をそんな風にあっさりと、あっさりと放棄してしまった。私には……そんな事……出来ないな
もう済んだことは仕方がない、とばかりにさっさといーちゃんは向こう岸についていた。
いーちゃんは、上着を脱ぎ、かなみさんの上に被せた。
その後、ダイニングに集合することになった。
深夜さんの顔は、やっぱり青ざめていた。
そうして、平穏だった島での生活は幕を閉じた。
そしてまた、次の幕が開いてくる。


 あとであかりさんに聞いた話になる。
 イリアさんの洋館での朝は、ごく普通に、ごくごく普通に始まった。
 朝食の時間には珍しく、島にいる人のほとんどが円卓にそろっていた。そのためにイリアさんが朝食をみんなで食べることを提案し、まだそこにいなかった三人、弥生さんをあかりさんが、私をいーちゃんが、そしてかなみさんを深夜さんが呼びに行った。
 そしてその用事のことをすっかり忘失したいーちゃんが私と話しこんでいた時、ダイニングに戻ってきた深夜さんがみんなに告げた言葉は、「かなみが……殺されている」だった。


 だけど……
 それにしても。
 殺人事件。
 それも、これは、ただの殺人事件ではなくて──首のない殺人事件。首斬り。
「ぼくは……、そうですね。夕食のあとは、ずっと玖渚と一緒にいましたよ。玖渚の部屋で風呂借りて、それから、玖渚かお腹すいたって言うんで、リビングに行きました。途中であかりさんに会ったはずです。会いましたよね?はい。リビングには、あかりさんと真姫さんと深夜さんがいて、ぼくたちのすぐ後にハルちゃ、永久咲さんが来て──、それで……地震。地震があったでしょう?その地震が起きたときまでリビングにいました。その後は、玖渚を部屋に送って、それで……、寝ましたね。朝は六時に起きて、それからはずっと玖渚と一緒です。」
 アリバイ調査。
 なぜいーちゃんからなのか分からないが、屋敷の主人たるイリアさんが《じゃあ、あなたからお願いします。》言ったのだから仕方がないか。
どうやらイリアさんにとってはいーちゃんが第一容疑者であるらしい。
 ダイニング。
 少し冷めてしまった朝食を食べながら。
 イリアさんが次に私に視線を向ける。
「では、次は遥奈さん。お願いします。」
「・・・・はい」

                了     
 
              『7月23日、7段目花宴咲織へ』
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COMMENT : 無題
おお完成したんですね!
今は時間がなくて読めませんが、帰ってきたら読ませていただきます!
伊藤さんお疲れ様でした!
咲織さんがんばって下さい!
針山 URL 2006-07-25(Tue)09:25:32
COMMENT : やっと
やっと完成したね!
おめでとう!
咲織さん!頑張ってください!
小雪 URL 2006-07-24(Mon)07:58:46
COMMENT : うわぉ!!
お、お久しぶりです!

さ、殺人事件が始まり、次々と事件が起こると言うちょっとした山場で咲織の番ですか・・・!
これはこれは・・・大層なお役柄です!
がんばって書かせていただきます!!
花宴咲織 URL 2006-07-23(Sun)22:44:45
COMMENT : 感想1
ついに始まりました。殺人事件。
午前の行動は、今のところ全員本作どうりの模様です。
そして遥奈の過去を匂わせていそうな文がちらほら……

さあここからが本番です!次は咲織さん、がんばってくださいね!
凪夏儀 2006-07-23(Sun)19:42:36
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