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伊東なつみさんが、事情により休稿するとの連絡があったので、僕が急遽作成させていただきました。
なんだかパスが多いですが、みなさん多忙なようです。時間がかかってしまってすみませんでした。
ではまあ気を取り直して
クビキリ+第12話ー
≪ここまでの粗筋~
息吹かなみ殺害の事件の夜。遥奈は玖渚の部屋に呼ばれる。事件の話をするのかと思われたが、ちょっとお出かけだったりお風呂だったり、好きな人談義だったりでなんだかよくわからないことに……≫
『2段目、凪夏儀』
玖渚さんの部屋に四人が集まり、かなみさんの事件についての考察がなされた。
結果、玖渚さんといーちゃんによって、そのトリックはあっけなく解明された。
なんだかパスが多いですが、みなさん多忙なようです。時間がかかってしまってすみませんでした。
ではまあ気を取り直して
クビキリ+第12話ー
≪ここまでの粗筋~
息吹かなみ殺害の事件の夜。遥奈は玖渚の部屋に呼ばれる。事件の話をするのかと思われたが、ちょっとお出かけだったりお風呂だったり、好きな人談義だったりでなんだかよくわからないことに……≫
『2段目、凪夏儀』
玖渚さんの部屋に四人が集まり、かなみさんの事件についての考察がなされた。
結果、玖渚さんといーちゃんによって、そのトリックはあっけなく解明された。
要するに、ペンキの河による空間的密室は、ペンキを地震のときではなく、殺害した後に犯人が作ったものである、ということだった。つまり犯人の可能性は朱音さん以外にも出てくることになる。もとからそうだった私などなおさらだ。
まあフタをあけてみれば、それはつまらないトリックだった。いーちゃんも言っていたが、やはり本物の殺人現場を前にしては、普通の思考、冷静な思考をすることは難しいのだということがよくわかった。いや、思い出したというべきかも知れない。
そして今、私は玖渚さんの部屋の外に出たところだ。
玖渚さんがひかりさんに訊いた『イリアさんの理由』が、話の区切りとなり、さきほどから相槌ばかりを打っていた私は、ひかりさんと同じタイミングで退出したのだった。
私の後に部屋を出たひかりさんが、扉を閉める。
さてこの後はどうしようか。例え事件が起こっても今しなければならないことは見当たらない。用事があるとすれば、明日に朱音さんに会いに行くことくらいだろう。自分の身を守るための多少の警戒は必要だろうけれど、それほどに気張る気にもなれない。
「あの……永久咲さん」
ちょうど歩き出そうとしたところで、ひかりさんに呼び止められた。
「? どうかしましたか、ひかりさん」
「ちょっと、お時間よろしいでしょうか?」
訊いてくるひかりさんの顔色が、さきほどより少し悪くなっているように見える。
それが彼女の中にある何かしらの葛藤であることは、すぐに分かる。優しい人は、嘘が付けないのだ。
「いいですよ。まだ寝るのには早いですしね。ここでですか?」
了承し、訊き返すと、ひかりさんは遠慮気味な顔をして、
「いえ、ここでもいいんです。すぐおわりますから」
「はあ。なんですか?」
「あの……」
ひかりさんは言いづらそうに口ごもる。
その顔色はますます悪い。何かを恐れているようにも見える。
何を恐れるというのか。
「あの……食事のときのことなのですが」
恐る恐るといった感で、ひかりさんは言葉を連ねていく。
その表情は、いかにも険しい。
「永久咲さんは……どうしてあんなことをおっしゃったのですか?」
「え?」
夕食のときのことだろうか。思い返してみて、ひっかかる言葉は一つだけだ。
「あの、……あなたは本当にイリアさんですか、ってやつのことですか?」
「…………はい」
ひかりさんは首肯する。
その雰囲気は、重い。
さきほど、部屋の中での雰囲気とはうって変わっている。
もしかして主人を侮辱したと怒っているのだろうか。たしかにあの時は思いついたことを考えなしに口にしていた。
「あれは、ですね。ほとんど直感だったんです。考え無しの一言で、あんまり深い意味はないんですよ。だから……」
あわてて弁解しようとするが、言い言葉は浮かんでこない。
普段優しい人が怒り出すと、それを納めるのは大変なことのなのに。今になって自分の愚考を呪った。もしかしてこの状況を作り出したくて、真姫さんは私にあんなことを言わせる状況をつくったのではないだろうか。たしかにこれは、享楽主義の第三者から見たら楽しい図かもしれない。
「永久咲さんは……」
重くなっているひかりさんの口が、ゆっくりと開いた。
「永久咲さんは、わかっているのですね。それが、あなたの才能の一端……玲さんも言っていた、あなたの片鱗なのですね」
ひかりさんが突然わけのわからないことを口にしだした。
わかっている?
才能の一端?
片鱗?
なんのことを言っているのか。
突然の話題の変化に、私はついていけていない。
驚きで沈黙する私を、ひかりさんはまっすぐに見つめてきた。
悲しそうな瞳。しかしその中にはなにかしらの決意の意思が見られる。
「ここからの話は、他言無用でお願いします。よろしいですか?」
今までとはまた変わった、力強い口調だった。
私は無言のまま首肯する。
「これは、この島のできた由来、そしてイリア様の真実のお話です」
その雰囲気に、ごくりと、喉のなる音が聞えた。
≪十月六日、7段目 花宴咲織へ≫
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