×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
癒井唯さんがおやすみのようなので、ぼくが書かせていただきました。続き、針山さんお願いします!
≪ここまでの粗筋~
二度目の殺人がおき、二度目のアリバイ調査が行われ、島にいる者たちはチークを組んで行動することになった。そんな話をしていた中、遥奈だけが別のことを思考していた ≫
解決編までの急転直下!
クビキリ+15話!
「すいません。先に行ってもらっていいですか」
上階に上る階段の手前まで来て、私は前を歩く三人に言った。
≪ここまでの粗筋~
二度目の殺人がおき、二度目のアリバイ調査が行われ、島にいる者たちはチークを組んで行動することになった。そんな話をしていた中、遥奈だけが別のことを思考していた ≫
解決編までの急転直下!
クビキリ+15話!
「すいません。先に行ってもらっていいですか」
上階に上る階段の手前まで来て、私は前を歩く三人に言った。
最初に振り向いたのはすぐ前を歩いていたひかりさんだった。
「どうしたんですか永久咲さん? 忘れ物だったら私が」
「いえ、ちょっと用事を思い出しただけです。すぐに戻ってきますから。玖渚さんの部屋ですよね?」
「うにー。そうだよーん」
「じゃあ、後で」
きびすを返してきた道を少し戻る。けれど二歩目を踏み出したところで、いーちゃんが私を呼び止めた。
「ねえハルちゃん」
何度も呼ばないでと注意した呼び方で、
だから私も同じように注意された呼び方をあえて使う。
「なんですか、いーちゃん」
呼び止め、けれどいーちゃんは何か言うことを迷っているようだった。
そのまま数秒間じっとして、結局言ったのは一言だけ。
「…………いや、戯言だよな。ううん、なんでもないよ。あとでね」
こうして三人と私は別れた。
私は来た道を戻り、曲がり角に一番近かった部屋に入った。
使われていないのか鍵はかけられていなかった。部屋は暗い。明かりがないので当然だが、慣れていない目でも見えたいくつかの家具から、ここがお客さんが多かったとき用の予備の部屋であることが分かった。
入り口を閉め、一人たたずむ。
ここに来た理由は単純。
呼ばれたからだ。
さっきこの部屋の前を通ったとき、明らかな視線を感じた。
それはあからさま過ぎるものだったが、意識的な集中がなされ、向けられた本人しか気づかないタイプの視線だった。いや、あれはただの視線でなかった。
殺気。殺意ある視線が廊下で私を射抜いていた。
そしてその感覚は今、この部屋においても感じている。
「来ましたよ、私に用事があるんでしょう」
しかしその殺気の主は返事をしない。
気配自体は部屋の中に感じるが、相手はそれを部屋全体に充満させているらしく、暗い部屋の中ではその位置は測れない。
「いいんですか。今だったらまだご飯のすぐ後だから誰がいなくて誰がいるか、すぐに分かってしまいますよ」
言いながら、気配を探った。
向こうはこちらの位置を知っている。だから先手はまず向こう。こちらは後手だ。
相手の攻撃を読みきり、カウンターを叩き込む。
「大丈夫さ」
声、
そして同時に気配が表出した。
「なぜならあの場所にいることになっているのだから」
真横。
扉のすぐ横。私の手にぎりぎり届かない場所だ。
そこから突き出されたものをかわすため、私は身体を思い切りひねり、曲線に身体を九十度傾けながら大きく後ろへ跳ぶ。
「くっ!」
私の腕を鋭いものがかすめた。ナイフ。刃渡り十センチほどの、けれど分厚い刃物がその手には握られていた。
相手も私が跳ぶのと同時に、こちらに跳んできた。
間合いを取らせないつもりだ。
一瞬で手の中のナイフを回転させ逆手に持つと、切っ先を私の頚動脈をめがけて振り下ろしてくる。
それをもらえば致命傷は間違いない。
かなりの高確率で死ねる。
死ぬ。
けれど私は一度死んだ身だ。
感じるのは既知感。
こんなことは既に起こったことだ。
ならば私はだから私はだからこそ私は対処法を知っている。
ほとんど反射的に、私の右手は襲撃者のナイフを持つ手を止めていた。力は圧倒的に向こうの方が上だが、そこは技術でカバーする。
一瞬だけの抵抗に、相手がさらなる力を入れたところを逆にそれを引く。
その動きと同時に身体を相手の腕の下にもぐりこませ、ナイフの起動から身体を逃す。
そしてそのまま、
「――枷鎖――真風」
力の流を掴んで離さず、利用する。
「――川遠――境域っ」
「ぐうっ」
そして相手は吹っ飛んだ。
しかし身体を床に打ち付けることなく、綺麗に受身を取ってその衝撃を逃していた。
実戦で使うのは初めてではないけれど、所詮は見よう見まね。本物のようにはいかない。
襲撃者はゆっくりとその身を起こした。
手に刃物はない。どうやらさっき飛んだときに落としてしまったらしい。
「遥奈ちゃん、けっこう強いんだ……」
まだダメージが抜けれていないのか、その声には力がない。
「ただの合気道ですよ」
「ただの合気道ね。ただの、……純粋にただの殺人術としての合気道を修めているやつなんかそうはいないんだけどね」
「以前ホームステイしていたとある旧家で習ったんですよ」
さてあの双子は元気にしているだろうか、いや今はそれどころではないが。
向かい合い、構えをとりなおす。
「まだ、やるんですか」
それは私なりのはったりだった。
不意打ちが成功しなかった時点で、私の半端な合気術がそうそう通じるとは思えない。
「そうだね。もう終わりにしよう」
「え?」
そして、彼はその懐からそれを取り出した。
黒くて無骨な、鉄の塊を、
揺れたカーテンから入った明かりが相手の姿を照らした。
そこにいたのは銃をこちらにかまえた、
逆木深夜の姿だった。
『11月2日、針山へ』
「どうしたんですか永久咲さん? 忘れ物だったら私が」
「いえ、ちょっと用事を思い出しただけです。すぐに戻ってきますから。玖渚さんの部屋ですよね?」
「うにー。そうだよーん」
「じゃあ、後で」
きびすを返してきた道を少し戻る。けれど二歩目を踏み出したところで、いーちゃんが私を呼び止めた。
「ねえハルちゃん」
何度も呼ばないでと注意した呼び方で、
だから私も同じように注意された呼び方をあえて使う。
「なんですか、いーちゃん」
呼び止め、けれどいーちゃんは何か言うことを迷っているようだった。
そのまま数秒間じっとして、結局言ったのは一言だけ。
「…………いや、戯言だよな。ううん、なんでもないよ。あとでね」
こうして三人と私は別れた。
私は来た道を戻り、曲がり角に一番近かった部屋に入った。
使われていないのか鍵はかけられていなかった。部屋は暗い。明かりがないので当然だが、慣れていない目でも見えたいくつかの家具から、ここがお客さんが多かったとき用の予備の部屋であることが分かった。
入り口を閉め、一人たたずむ。
ここに来た理由は単純。
呼ばれたからだ。
さっきこの部屋の前を通ったとき、明らかな視線を感じた。
それはあからさま過ぎるものだったが、意識的な集中がなされ、向けられた本人しか気づかないタイプの視線だった。いや、あれはただの視線でなかった。
殺気。殺意ある視線が廊下で私を射抜いていた。
そしてその感覚は今、この部屋においても感じている。
「来ましたよ、私に用事があるんでしょう」
しかしその殺気の主は返事をしない。
気配自体は部屋の中に感じるが、相手はそれを部屋全体に充満させているらしく、暗い部屋の中ではその位置は測れない。
「いいんですか。今だったらまだご飯のすぐ後だから誰がいなくて誰がいるか、すぐに分かってしまいますよ」
言いながら、気配を探った。
向こうはこちらの位置を知っている。だから先手はまず向こう。こちらは後手だ。
相手の攻撃を読みきり、カウンターを叩き込む。
「大丈夫さ」
声、
そして同時に気配が表出した。
「なぜならあの場所にいることになっているのだから」
真横。
扉のすぐ横。私の手にぎりぎり届かない場所だ。
そこから突き出されたものをかわすため、私は身体を思い切りひねり、曲線に身体を九十度傾けながら大きく後ろへ跳ぶ。
「くっ!」
私の腕を鋭いものがかすめた。ナイフ。刃渡り十センチほどの、けれど分厚い刃物がその手には握られていた。
相手も私が跳ぶのと同時に、こちらに跳んできた。
間合いを取らせないつもりだ。
一瞬で手の中のナイフを回転させ逆手に持つと、切っ先を私の頚動脈をめがけて振り下ろしてくる。
それをもらえば致命傷は間違いない。
かなりの高確率で死ねる。
死ぬ。
けれど私は一度死んだ身だ。
感じるのは既知感。
こんなことは既に起こったことだ。
ならば私はだから私はだからこそ私は対処法を知っている。
ほとんど反射的に、私の右手は襲撃者のナイフを持つ手を止めていた。力は圧倒的に向こうの方が上だが、そこは技術でカバーする。
一瞬だけの抵抗に、相手がさらなる力を入れたところを逆にそれを引く。
その動きと同時に身体を相手の腕の下にもぐりこませ、ナイフの起動から身体を逃す。
そしてそのまま、
「――枷鎖――真風」
力の流を掴んで離さず、利用する。
「――川遠――境域っ」
「ぐうっ」
そして相手は吹っ飛んだ。
しかし身体を床に打ち付けることなく、綺麗に受身を取ってその衝撃を逃していた。
実戦で使うのは初めてではないけれど、所詮は見よう見まね。本物のようにはいかない。
襲撃者はゆっくりとその身を起こした。
手に刃物はない。どうやらさっき飛んだときに落としてしまったらしい。
「遥奈ちゃん、けっこう強いんだ……」
まだダメージが抜けれていないのか、その声には力がない。
「ただの合気道ですよ」
「ただの合気道ね。ただの、……純粋にただの殺人術としての合気道を修めているやつなんかそうはいないんだけどね」
「以前ホームステイしていたとある旧家で習ったんですよ」
さてあの双子は元気にしているだろうか、いや今はそれどころではないが。
向かい合い、構えをとりなおす。
「まだ、やるんですか」
それは私なりのはったりだった。
不意打ちが成功しなかった時点で、私の半端な合気術がそうそう通じるとは思えない。
「そうだね。もう終わりにしよう」
「え?」
そして、彼はその懐からそれを取り出した。
黒くて無骨な、鉄の塊を、
揺れたカーテンから入った明かりが相手の姿を照らした。
そこにいたのは銃をこちらにかまえた、
逆木深夜の姿だった。
『11月2日、針山へ』
PR
この記事にコメントする
