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おおお! 咲織さんにはきわどいところを回したつもりだったのに、肩透かしを食らわされてしまいました。しかしさすがは咲織さん。見事に話をつなげております。

二人目の殺人を前に、遥奈は……
  
クビキリ+13話


≪ここまでの粗筋~
 遥奈はひかりさんに一つの真実を聞かされることに≫


「いや・・・そんなことってさ」
 先ほどひかりさんに言われたことが頭の中をぐるぐる回る。
 いや、本当に・・・
「ルール違反じゃない?」
 もちろん、それが何のルールかなんてわからないけれども。
 そんなに多くの人生経験をつんできたわけじゃないし、そんなに多くの人と触れ合ったわけじゃないけれども。
 これから、自分が無事に生きていけるかどうか、不安になってきてしまったではないか。
「いや、ホントに・・・」
 ありえないよ。


◆◇◆

 自分のルーツがない、というのは時々ものすごく不利な状況に陥る。
 それは、何か今までにあったことのない存在、自分よりはるかに高みにいる存在に会ったとき、自分を肯定できないからだ。
 自分はこうだ、だからここではこうなんだ、そういう風に思えるものがないから、不安になる。
 だから、自分という存在を消してしまいたくなる。
 もちろん、最初から何もなかった私には、そんな思いすらも思い浮かばなかったのだけれども。
「でも、狂っているからこそ正常、ってこともあるよね」
 自分に言い聞かせるように、そう呟き、思考を終了させた。
 考えることはそんなことじゃない。
 イリアさんのルーツとか、この島もルーツとか、そんなことじゃなくって。
「問題は、赤音さんがどうして殺されたかということ」
 WHYではなくHOW TO。
 朝起きたら、取り乱したあかりさんに腕を引かれ、赤音さんの元へ連れて行かれた。
 そこには、首のない赤音さんの姿。
 赤音さんだったものの姿。
『次あったら、君の才能を教えてあげるよ』
 といった赤音さんの口は、顔は、頭はそこにはない。
 クビキリ屍体。
 一つの、そして二つ目の屍体。
 部屋には血、血、血――――――
 人間ってあれだけの血液を体に保有しているんだ、と思わされた。
 われながら、捉えるところが違うと思うのだが。
「ハルちゃんはどうおもう?」
「何に対してですか?」
「だから、今回の事件に関して?」
「んー・・・犯人さんは、とっても体力がある方だなって思いまして」
 確か、赤音さんは柔道だか剣道だかなんだか忘れたが、スポーツ系の何かで国体に出ていたという記憶があったんだが。
 もちろん、それはER3のデータにあっただけだから、ニセモノかもしれないけど。
 でも、ER3で体術とか教えるんだし、赤音さんも護身術くらいは出来ると思うんだけどなぁ。
 あ、『出来た』か。赤音さんが死んでいるのならば。
「あと・・・なんか状況がクリスティの『そして誰もいなくなった』に似ているなと思いまして」
 あれほどたくさん人が死んでいるわけではないけれども。
「? ああ、確か・・・みんなで仲良く食事を取っていたときに次々とみんな倒れていき最後には料理人しか残らなかったというあの名作のこと?」
「「・・・・・・」」
 玖渚さんと2人で思わず黙り込んでいーちゃんを凝視してしまった。
 私は、そんな話など知らない。
「なんですか? その話」
 ひかりさんが少し興味深そうにいーちゃんに訊ねる。
「え、だから『そして誰もいなくなった』?」
「・・・違いますよ」
 食事時にみんなが倒れて、最後に料理人しか残らなかったって・・・
 それ、完璧食中毒じゃん。クリスティがそんな作品書くわけないし、そんな作品書く人間なんて、きっと誰もいないよ。
「えっと私の記憶では・・・一人ひとり殺されていって最後には誰かが犯人だったような」
「それってどんな連続殺人もののミステリーでもそうだよね」
「う”・・・」
 おぼろげながら覚えているだけで、人には説明できないんだよ。
 でも、料理人の集団食中毒事件じゃないもん!
「イギリスのデヴォン州の島・インディアン島に、年齢も職業も異なる十人の男女が招かれた。
 しかし、招待状の差出人で、この島の主でもあるU.N.オーエンは、姿を現さないままだった。
 やがてその招待状は虚偽のものであることがわかったが、島から出ることができなくなり、完全な孤立状態となってしまう。
 十人が不審に思った晩餐のさなか、彼らの過去の罪を告発する謎の声が響き渡った。
 その声は蓄音機からのものとすぐに知れるのだが、その直後に生意気な青年が毒薬により、さらに翌朝には召使の夫人が原因不明で死んでしまう。残された者は、それが童謡「十人のインディアン」を連想させる死に方であることに気づき、また当初十個あった人形が八個に減っていることにも気づく。さらに老将軍の、今度ははっきりと撲殺された死体が発見され、人形もまた一つ減っているのを確認する頃には皆、これは自分たちを殺すための招待だった、そしてその犯人オーエンは、島に残された七人の中の誰かなのだ、と確信する。
 誰が犯人かわからない疑心暗鬼の中で、召使、老婦人、元判事、医者が死体となり人形も減っていく。
 そして残された三人も最後には残らず死んでしまい、警察の捜索が始まっても、誰が十人を殺したのかわからずじまいであった。
 真相は、漁師が拾ったボトルに入っていた犯人の告白文により明らかになる。

 登場人物は、

 ローレンス・ウォーグレイヴ - 高名な元判事
 ヴェラ・クレイソーン - 秘書・家庭教師を職業とする娘
 フィリップ・ロンバート - 元陸軍大尉
 エミリー・ブレント - 信仰のあつい老婦人
 マカーサー将「すみません、友さん、そこまではもういいです!」
 友さんが丸々本を暗記したのを朗読しているように言ったのを途中でさえぎった。
 いや、登場人物とかはどうだっていいんだけど、うん。
「ありがとうございました」
「別にいいよー」
 途中でさえぎったのは、私の頭が処理に追いつかなかったから。
 ただ、それだけ。
「えっと今、友さんが言ってくれましたけど・・・島から出られない状況、一人
ずつ殺されるところ。
 皆さんが何かの天才という以外に何かミッシングリンクがあるのかもしれませんが、共通点はありますし。
 過去犯罪は犯していないと思いますが」
 まぁ似ているところはそれくらいなのだが。
 本当に、それだけなのだが。
「ふーん・・・」
 いーちゃんは興味がなさ気だった。
「それって犯人誰だったの?」
「確か・・・判事だったち思います」
「つまり、ハルちゃんのその理論だと、“意外な人物が犯人”ってことだ」
 まぁ物語のなかでは“死んだ人間が犯人”だったようだけど。といーちゃんは付け足した。
 もちろん、物語の中だからそういう風に死んだ偽装が出来ただけで、実際にはできないだろう。
 かなみさんも赤音さんも、2人とも首を切られているのだし。
 万が一かなみさんが生きていたとしても、かなみさんは足が悪い。
 車椅子なしには動けないだろうし、赤音さんならもしかしたら、あの部屋から脱出することが可能かもしれないがかなみさんでは無理だろう。
「物語と現実は違いますよねー・・・」
 そう物語だったら、そろそろ何か、今までの条件を崩すような情報がもたらされるはずなのだ。
 例えば、誰かの鉄壁のアリバイが崩れるとか。
 例えば、殺すのに使った道具が見つかるとか。
 例えば、2人の首が見つかるとか。
 そして・・・三人目の被害者を作ろうとしているときに、探偵役に見つかってしまうとか。
「ま、現実ですからね、ここは」
 だから・・・死んだらやり直しも何もないのだ。
 ヒーローのように、生き返ることも出来ないのだ。
「赤音さんは、最後に抵抗とかしなかったんでしょうか」
 それは、誰にともなく呟かれた。


≪10月9日 8段目 蝦彌永へ≫
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