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というわけで僭越ながら後編です。
やはり長すぎはいけませんでした。以後、気をつけます。
そして曖昧だった遥奈の過去をばっさり明らかにしてしまう
クビキリ+第9話その2!!
『二段目:凪夏儀』
いったいどこまで調べたんだ。
いや、ここはむしろどこまで調べることが可能だったかということだ。
やはり長すぎはいけませんでした。以後、気をつけます。
そして曖昧だった遥奈の過去をばっさり明らかにしてしまう
クビキリ+第9話その2!!
『二段目:凪夏儀』
いったいどこまで調べたんだ。
いや、ここはむしろどこまで調べることが可能だったかということだ。
「ごめんね。でも私はER3の七愚人の一人だから知識欲にかけては人並み以上なのさ」
「なんの自慢にもなっていませんし謝れてもいません。それで、……いったいどこまで調べたんですか」
「最初に引っ掛かった情報は半年前のものだね。思い出してみると驚いたよ。君はER3関連の部署に一時期入っていたんだね。そこで君が手伝っていた研究も知っている。生物工学、生物化学は専門外だけど、だからと言って門外漢というわけじゃあない。あそこならば望めばどこの部署の資料でも手に入るからね。その中に君の名前はあった。外部協力者の蘭にね」
朱音さんはたんたんと語る。
そしてそれらの情報は何一つ間違いではない。
誰にも言っていなかったことが既に知られていたことはショックではあるけれど、それでも予想は出来る事態だった。相手は七愚人、学問の最果てER3のさらに頂点、≪世界の回答にもっとも近い7人≫の一人なのだ。
しかし私が知りたいのはそんなことではない。
そんなことは知っている。私が知りたいのはそれより先、私が知らないこと。
それはこの島で朱音さんの存在を知って以来考えていることだった。
この人ならば。
もしかするとこの人ならば知っているのではないだろうか。
私が最も知りたいと思っている、
私の、過去を。
「悪いけれど、結果で言えばハナちゃん。君の期待には沿えない」
「え? それはどういうことですか」
「ER3の情報機関にアクセスしてみても調べられなかったってことだよ。君の5年以上昔の情報は何一つ分からなかった。あの探索能力と解析能力をもってしても何一つ、ね」
朱音さんは何かを断定するような口調だった。
少しだけ残念そうだったかもしれない。
「そう……ですか」
そして私も同様に残念だった。その落胆は朱音さん以上だろう。
ここに来てからはまだ誰にも言っていなかったことだが、私には一つの曲げられない事実設定がある。
それは永久咲遥奈には5年以上過去の記憶がない、ということ。
記憶喪失。過去消失性障害。Amesia。
私の覚えている最初の記憶は5年前、病院のベッドに寝ている自分と、ベッドの横に立ってじっと私を見つめる壮年の男性の姿だった。それは現在私が提督と呼んでいる男性だった。
その頃、私は少々特徴的な記憶のなくし方をしていたらしい。
普通ならば記憶喪失の際になくなるは、自分の名前や過去といった情報であって、字の書き方や言葉や、箸の持ち方といった単純な動作までは忘れないものだが、私の場合、それさえも過去とともに失っていた。私は本当に空っぽになっていた。幸いにも元は持っていたであろう技術だからか、言葉や字といったものはすぐに使えるようになったために、何もできない恐怖に苛まれ続けていた期間は幾分少なかった。
病院での回復を待ち、退院した私は提督に引き取られた。
それからの5年間、私は提督に連れられ、いろんなところを回った。
提督は私をどこかに預けるとふらっとどこかに消えて、また現れ私を別の場所へ導くとうことの繰り返しだった。提督は空っぽだった私の中身を埋めていくために、様々な場所へ連れ出し、触れさせてくれた。
欧州、西欧、南米、東南アジア、母国なのであろう日本にも数度訪れたこともある。言語さえも全てを失っていた私にとっては、抵抗がない分いろんな言語を学ぶのには苦労を感じなかった。
それらの中では決して楽しいことばかりではなかったが、様々な経験は空っぽだった私をだんだんを満たしていった。
提督はどこに行くにして私を誰かと引き合わせた。
そしてその旅の中で私は何度か人に『天才』と称されたことがある。
ある人は学習の天才と
ある人は習得の天才と
ある人は模倣の天才と
ある人は観察の天才と
そして提督は一度だけ私のことを進化の天才だ、と称した。
けれどそれらはどうしても私にはピンと来ない。
なぜなら私には私にしかできないことがない。
空っぽだった私には、そこに後付けばかりをつめこんだ私には、永久咲遥奈を永久咲遥奈たらしめる何かがない。
私が出来るのは私以外の人にも出来ることだけだ。
私は誰でも出来ることしかできない。
そんな天才はいない。
真の天才とは他から逸脱した個。決して他者の及ばない唯一を持っている者の事を指すはずだろう。ならば私はそんなものではない。何もない私は何でもない。一長一短でも欠点だらけでもなくて、何もない。ただの真っ白のキャンバス。まだ絵の描かれていないそれは、何の価値もないただの紙と同じだ。
天才は天才であるが故に天才である。
だからこそ私は天才などではない。
それを真に私に見せつけた存在。あの究極と出会った時、私はそう確信した。
そしてその旅の中で、私も自分なりに失った過去を探していた。
提督は私は不幸な事故にあったとしか教えてくれない。
しかし自分の力だけでは、あの病院に運ばれて来たのが目を覚ます一週間前だったこと意外、5年以上の過去を知ることは出来なかった。
この島へ来て、七愚人ならば、ER3の情報網ならばもしかすれば、とは期待していたけれど、残念ながらそのあては外れてしまったようだった。
「君が病院に運び込まれる前の記録は一切が存在しなかった。消されていたんじゃない。そんな気配すらなしに、まるで君はあの病院で11歳の状態から存在したのでないのかと思ってしまうくらいに君の過去は見つからなかった。これがどういうことだか分かるかな。私には分かる。そしてそれこそが君の進退、いや人生に大いに関わっているのだろうね」
「な……あぅ……」
朱音さんの口調が熱を帯びだしていた。
けれど逆に私はもうこの場から離れようと思うようになっていた。
これ以上ここにいるのはダメだ。嫌だ。いてはいけない気がする。
一歩、倉庫の扉から離れる。
その気配を察してか、すぐに朱音さんは反応した。
「もう帰るのかい。残念だな。ハナちゃんとはもう少し話をしてみたかったんだけどね」
「ごめんなさい。今日はちょっと疲れてて……」
自分でも分かるつれない返答だと思う。
けれどまともなど返事をする気にもなれなかった。
実際に疲れていた。
事件のこともあってか、それはこの場所に来てからずっと感じていた感覚だ。
そして話をするうちにそれはだんだんと積もって、今は精神がかなり疲弊している。理由はわからないが、この数分の会話だけで、私の体力のほとんどがどこかへ消えうせていた。
私の中の何かが、同様に見えない何かを拒絶しているような感覚。
ふらふらとした足取りで、倉庫から離れていく。
「おやすみ、また今度話をしよう」
扉の向こうから背中に声がかけられる。
私は返事をしない。
永久咲遥奈は停まらない。
朱音さんの言葉さえもよく聞き取れていなかった。
―― 次に会った時、私が君の才能の事を教えてあげるよ ――
朱音さんはまた楽しそうに言っていた。
私はその言葉を気にとめることも、振り返ることもなくその場を去った。
この後はどうするんだっけ?
なにか約束をしていた気がする。
頭に靄がかかったよう。
玖渚さんの部屋に行くん……だっけ?
今の私には、疲れを癒したら朱音さんともう一度話をしようということしか頭にはなかった。
だから私は後悔することになる。
もう一度の機会は、私達に訪れなかったから。
後悔は先に、立たない。
『三段目、矢賀波高也へ』
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COMMENT : 無題
お久しぶりです。スズシです。やっと塾の合宿から帰ってきたのですが・・・・・・・・・・・・・・実は私がいない間に小火があったようでパソコンとモデムが全焼して今友達の家で打っています。結構ひどい状況でリフォームも余儀ない状態です・・・・。そこで大変申し訳ないのですがインターネットにいつつながるか分からないので間を空けるのも申し訳ないし、退段させていただきたいのです。小説書けるのを楽しみにしていたのですが残念です。何でこう運が悪いんでしょうか・・・・・?ブログのほうもやめることになってしまったのでせっかく貼って下さったのですが剥がして頂ければと思います。でも、小説は友達に頼んで見に来ます!それでは短い間でしたが有難うございました!