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日原さん、宣言通りに投稿していただきありがとうございました! 
とても助かりましたぜぃ!

ではでは!
宿木先輩の雰囲気ブラフから一転、彼らは再び大樹神社へ
そこで語られる宿木都子の真実とは!?
起承転結そろそろ転だ
笑って泣いての後半戦
現代絵巻の怪異譚♪
刀語の第七話!!

で は な く て~

みやこフォックス007!!





《みやこフォックス》

 先輩が暮らす母屋は神社の裏手……ちょうど御神体が鎮座する場所の真後ろにある大きな平屋建て家屋の、その一番奥に先輩の部屋はあった。
 気絶し、白目をむいた八九寺をおんぶして、彼女をこんな目に会わせた張本人、宿木先輩の後に続いて僕は先輩の部屋に足を踏み入れた瞬間――最初に漏れたのは驚きの声だった。
「へぇ……」
 そんな間抜けな言葉と共に、思わずまじまじと眺めてしまう。
 部屋の全体は壁紙からカーテン、ベッドのシーツと絨毯に至るまで淡いピンクで統一された内装。右の壁には大きな本棚があり、その半ばを埋め尽くす大小様々なヌイグルミたち。正面には窓があり、その横には質素だけれど遠目から見ても高価そうで重厚な趣のある机と椅子。左側にはベッドとクローゼットがあり、その壁には先輩のポニーテールを縛るのと同じ大きな鈴が十個余。鈴から垂れる紐というかリボンの色が違うのが特徴だ。先輩なりのおしゃれのこだわりなのだろうか?
 なんというか、こういっては失礼だけれど、先輩のイメージに合わない部屋だ。もっとこう、シックというかモノトーンな感じを想像していたのだけれど……なんて女の子らしい部屋なんだろう。
 思い返してみれば、今までの僕の人生で女の子の部屋に入ったことが何回あるだろう。
 妹の部屋は数に入れないとして、まず思いつくのが戦場ヶ原。まあ、あれは部屋と言うより家だから正確には違うし、神原は論外だろう。委員長は機能的過ぎて――彼女らしいと言えばこの上も無く彼女らしいのだけれど――まあ、違うよな。してみれば、この阿良々木暦。初の女の子らしい部屋へと招かれたことになる。……うーん、微妙だなぁ……
 僕はベッドにゆっくりと、背中の八九寺を下ろしてシーツを掛けた。ちなみに、彼女のトレードマークたるリュックは枕元に置いてある。
「ご苦労だったな、阿良々木。もう出て行っていいぞ」
 宿木先輩は腕を組み、ベッドの側に立ちながらそう言い――そのままシーツをめくってその長身を潜り込ませようとした。
「まてまてまてまてまてまてぇー!」
 僕は慌ててベッドの端に膝を着く格好の宿木先輩の肩を掴む。
「なんだ? 阿良々木。私は疲れたのだ。自分のベッドで休もうとして何が悪い?」
「先輩がどこで休もうと勝手です! でも、そのベッドには八九寺が寝てるじゃないですか!?」
「そうだな。まあ、別に問題はあるまい?」
 しれっとそう言い、先輩は再びベッドへと潜り込もうとする。
「問題大ありです! ほら、先輩が休んじゃったら御神体どうするんですか!? 問題の解決もしてませんし、話が前に進みません!」
 本当は宿木先輩の目がそこはかとなく怪しかったり、指がわきわきいやらしく動いているからなんだけれど、そんなこと言ったらどうなるか分かったもんじゃないから当り障りの無い無難な理由付けをする僕だった。
「まあ、待て。そのことなら大丈夫だ」
 宿木先輩は顔だけをこっちへ向けて、そんなことを言ってくる。
「何が大丈夫なんですか?」
 聞くと、宿木先輩はふふん、と言いたげな、どこか得意げな表情を作った。
「ここはセーブポイントだ。今からどんなに時間が経とうがロードしてしまえばいいのだぞ?」
「いいのだぞ? じゃねーよ! ここはゲームの世界じゃねー!」
 叫び、僕は力づくで宿木先輩をベッドから引き剥がした。
 むー、阿良々木に怒られてしまった、とか呟きながら、宿木先輩は渋々とベッドの側にあったクッション――これもピンクで猫のイラストが描かれている――に座った。
 僕はまだ少し肩で息をしていたけれど、とりあえずそのまま絨毯の上に腰を下ろして胡座をかく。
 さて、どうしたものだろう。とりあえず手詰まりになってしまった。探そうにも手掛かりも何もないのでは、手の打ちようすら思い浮かばない。
「これからどうします?」
「そうだなぁ……。今日はもう疲れたからベッドで休もうか」
「だからそこから離れて下さい!」
 本当に気になるらしく、ちらちらとベッドに眠る八九寺に視線を送る先輩に、僕はまたもや声を荒らげた。
 まったく、先輩がこんな美少女趣味だったとは思わなかった。一年間、先輩の下で雑用をしてきたけれど、そんな素振りは微塵も見せなかったのに。
 あの頃の先輩といえば、仕事は出来、男女共に人気があり、そして占いが特技で――
「そうだ、宿木先輩。占いですよ、占い!」
 僕は思い付いたことを言葉にした。そう、宿木先輩には百発百中の、文字通りに全てを見通す占いがある。どうしてそんな、必殺兵器に気付かなかったんだろう。
「すまんな、阿良々木。それは使えない」
 期待に満ちた眼差しを向ける僕に、宿木先輩は――とても珍しいことなのだけれど――すまなそうな顔をした。
「使え……ない……?」
 半ば呆然と呟く僕に、宿木先輩は首を縦に振り、続けて口を開く。
「阿良々木。こっくりさんは知っているな?」
「え? ええ、まあ」
 不意な質問の意図は分からないけれど、とりあえず僕は頷いた。
 今さら改めての説明の必要の無いくらい有名なこっくりさん。お盆で作った台を使ったり、五十音表に十円玉を用いたりと、色々とやり方は様々だけれど、もっとも広く知られた降霊術であることは間違いない。
 漫画なんかではこっくりさんを行い、降りてきた霊が帰ってくれなくて無理矢理終了すると参加した誰かに霊が取り憑いて大きな事件に発展していくというのが定番で、その霊に憑かれた人間は一様にこう呼ばれる――狐憑き、と。
「私の占いはまさにあれそのものだ」
 宿木先輩は淡々と、言う。
「みんなには謎の巫女パワーとうそぶいていたがな。私は生まれながらの狐憑きだ。心の中で疑問を思えば、狐が――私と繋がっている殺生石の狐が答える。理屈や原理は分からない。そういうものなんだ。だから――」
 宿木先輩は言葉を切り、一度目を伏せてから言の葉を継いだ。
「だから御神体がいなくなった今――私との繋がりが消えてしまった今。私の占いは当たらない」
 すまんな阿良々木、と付け加え、宿木先輩は小さく頭を下げた。
 カラーン、と小さく鈴が鳴る。
 何を言えばいいんだろう。言葉が全く思い付かない。
 神がかっていた先輩の占い。それは謎の巫女パワーなんてものじゃなく、御神体に支えられた狐の力――生まれながらの狐憑き。
 怪異には、異常なほどに人並み以上に経験してきた僕だけれど――まさかそんな時から関係があったなんて……思いもよらなかった。
 なんて伏線だ。いや、後付け設定と言うべきか? この状況は――なるべくしてなったとでも言うのだろうか?
 きっと僕は愕然とした顔をしていたのだろう。それを宿木先輩は手詰まりになってしまったことに対してのものだと思ったに違いない。
 先輩は優しく、人を安心させるような笑顔を浮かべた。
「心配するな、阿良々木。――もう手は打ってある」
 その瞬間――壁にかかった鈴が一斉に鳴り響いた。
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COMMENT : 無題
ふふふふ、任せておけ!!
なぎ×なぎ 2007-12-01(Sat)12:20:39
COMMENT : 無題
ハラハラドキドキ(´ω`)
針山 URL 2007-12-01(Sat)00:10:01
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