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日原さんお疲れっす!!
なんだかみんなの投稿ペースがやたら上がっていますね。ビックリです。僕もなるたけ今年中には書き上げる気概で望みたい所存であります!

ではでは、終局に向けて一直線!

みやこフォックス010!!






 淡いピンクで統一された宿木先輩言うところの結界は依然ミシミシと軋むような音を響かせ、壁に掛かった十数個の鈴も変わらずカラカラと鳴り響く。
 圧倒的なピンチだった。
 頼りとすべき宿木先輩は、懐に肌身放さず持っていた狐の怪異を封印するという仕掛けを無くしてしまい、この窮地から脱するための方法をよりにもよって僕に求めるという最悪で暴挙にすぎる選択をしてくれた。
 だからと言う訳ではないけれど、騒がしく、いつ崩壊するとも知れない結界の中で考える。
 殺生石の本体は八九時の本質にとり憑いたと先輩は言った。ならば八九時の本質は何だ? 八九時は浮遊霊だ。だけど、それは上辺だけの状態で……本質は未だ蝸牛の怪異にあるとしたら? 
 蝸牛の怪異――それは帰りたくない者を戻らせない、帰るべき場所に辿り着けなくする怪異。どうして殺生石は――山の神とも言うべき狐はなぜにそんな状態になったんだろう?
「宿木先輩、どうして殺生石は封印を破ったんですか?」
 物事には絶対に原因がある。必ずきっかけがある。そこにきっと現状を打破するヒントがあるはずだ。
「別に何もないのだがな」
 先輩は腕を組み、言葉を続ける。
「もうすぐ秋祭りがあるだろう? それの準備をしていた時にな。御神体を奉ってある神殿がどうにも寂しかったので電飾で派手にきれいにきらびやかに飾り立て、スイッチを入れたらどうだ。どうも配線を間違えたらしくてな。ショートしてランプの全てが割れるて漏電した電気が神殿中に流れてしまったことがあったくらいだぞ。いやー、あのときは痺れた痺れた」
 場違いなくらいに爽やかに、はっはっはっはっと笑う先輩に合わせ、僕もはっはっはっはっと笑う顔のまま――先輩の頭を平手で叩いた。――手加減はしたけど力加減はせずに。
 ゴンッ、と宿木先輩の額が絨毯を打つ音に続き、小さく髪飾りの鈴が小さく鳴った。
「い……痛いじゃないか、阿良々木! なぜにお前は人の頭をそうぽんぽんと叩く!? 阿良々木は好きな女の子にはついついイジワルしてしまうツンデレ体質なのか!?」
 がばりと頭を起こし、目尻に涙をにじませながら宿木先輩は抗議の声をあげた。
「何もないことないじゃないですか!? 明らかにそれが原因でしょう!?」
 封印がどういうものか分からないけれど、それが結界と同じ様な理屈なのだとしたら――結んだ界を壊すには申し分ないことじゃないだろうか?
「何? そうなのか? 確かにあの時、狐の悲鳴のような鳴き声が聞こえたが……」
「あぁー! もうこの人はっ!!」
 叫び、がしがしと頭を掻き毟る。
 これではっきりした。現状を理解した。
 狐は逃げ出す事に成功した。そして『黒鳥巡り』につかまり――たまたま来ていた八九寺にとり憑いた。いや、もしかしたら蝸牛の怪異に引っ張られたのかもしれない。――あの母の日の僕のように。
 そして狐はどこにも行けなくなった。神社から出ることも出来ず、元いた神殿に戻る事も出来ず。ただ敷地内をふらふらとさ迷うことしか出来ない――迷子になった。
「先輩……どうにかなるかもしれませんよ」
 僕は言い、視線を窓へと向けた。
 考えた仮説が正しいのなら、事態の収束は簡単だ。殺生石を――狐を神殿にまで連れていけばいいだけだ。そう、あの日の八九寺のように。
 そのためにはここを出なくてはならない。ミシミシと軋みをあげるこの部屋から――結界から出ないといけない。
 怪異は目に見えない。見えないけれど、そこに間違い無く存在しているのが怪異だ。 
 だから僕はイメージする。ドアを食い破ろうとする大きな狐の姿を。想像する事で怪異をドアに縛り付ける!
「先輩、ついて来てください!」
 八九寺を素早く背負うと勢いよく窓を開け、僕は大きく外へと飛び出した。

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