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004は新登場の作家さん、日原武二さんよりいただきました。
日原さん、ありがとうございました。
さてさて新キャラ、宿木都子との再会を果たした阿良々くん。
ここで語られる怪異とはなんなのかが明かされます。
ストーリーは今だ走り出した段階です。
作家様の途中参加はいつでも歓迎なので、お好きなときにプロフィールにあるアドにメールか、それかコメントに書き込んでください。おまちしておりますっ
今のところ参加者は三名なので、次はぼくが書くことになります。
一週間から二週間で書き上げるつもりです。
ではでは
みやこフォックス004!
日原さん、ありがとうございました。
さてさて新キャラ、宿木都子との再会を果たした阿良々くん。
ここで語られる怪異とはなんなのかが明かされます。
ストーリーは今だ走り出した段階です。
作家様の途中参加はいつでも歓迎なので、お好きなときにプロフィールにあるアドにメールか、それかコメントに書き込んでください。おまちしておりますっ
今のところ参加者は三名なので、次はぼくが書くことになります。
一週間から二週間で書き上げるつもりです。
ではでは
みやこフォックス004!
都子先輩の後に続き、通されたのはだだっ広い、文字通りの広間だった。その真ん中に二人、大きな座布団にお互い正座し、ほうじ茶と豆大福を挟んで向き合っていた。
「この神社の本家は出雲にあってな」
お茶に口を付けながら、巫女姿の先輩は唐突に話し出す。
「かなり特異特殊な神社で巫女の姿からして違う。朱袴ではなく、黒袴。巫女全員が覆面をして顔を隠すというだけで異種異様だというのに、全員が全員とも帯剣している。故についたあだ名が武装神――」
「――ちょっと待って下さい」
たまらず僕は待ったをかけた。冗談にしても――事実だとしたらなおのこと、その話はあまりに危険だ。
「ん?」
先輩は見るからに不機嫌そうに、不満そうに目を半眼にして僕を睨む。
さすが在学中、そのひと睨みでもって生徒から教職員まであらゆる者を黙らせた魔眼。『殲滅の宿木』とふたつ名で呼ばれた眼力は今もって健在だ。
だがしかし! 僕だって伊達に先輩の下で一年間雑用をしてきた訳じゃない。その程度の眼光にはもう耐性がついている!
だから僕は毅然と、そして堂々として――
「ごめんなさいっ!」
頭を下げた。謝った。そりゃもう必死で。全力で。
「ごめんなさい! 許してください! 僕が悪かったです。話の腰を折ってすいません。だから地下の拷問部屋は勘弁して下さい。生爪剥がしは許して下さい。“――”を注射して喉を掻き毟らせて殺す事をしないで下さい。ごめんなさいと千回言いますから明日の朝日を拝ませて下さい。それから」
「――黙れよ、阿良々木」
ピタリ。と、僕の舌と唇が動きを止める。僕の意志に関係無く――身体が意志を持ったように動きを止める。
僕は恐る恐る頭を上げた。そこでは先輩が――巫女姿の宿木都子先輩が、お茶をすすっていた。
「お前、何か勘違いしてないか? 人をどこぞの鬼の末裔のように言うなんてな。私がいた頃のお前はそりゃもう素直で『あなた様のために働けるのがワタクシの一番の喜びです。あなた様の忠実なる下僕、卑しい哀れな犬っころになんなりとお命じ下さい』と」
「言ってねーよ! なに勝手に捏造してるんですか!?」
「そうだったか? やはり過ぎ去った思い出は美化されてしまうのだな」
「美化!? 後輩を不当に貶めることが美化なの!?」
と、そこで。――二人は不意に、同時に笑い出す。
「あっはっはっはっはっは。久しぶりだな、このやり取り。この会話」
「そうですね。本当――懐かしいです」
先輩とは三年近く会ってないけれど。お互いの環境は大きく変わっているだろうけれど。
僕の目の前にいる先輩はあの時のままの先輩で。
先輩の目の前にいる僕はあの時のままの僕で。
宿木都子の前にいる阿良々木暦はあの時に戻っている。
そんな些細なことが嬉しくて。もう人ですらなくなってしまった僕にはとても嬉しくて。だから僕は、きっと久しぶりに心の底から楽しかった。
「それで阿良々木。今日は何をしにこんなところまで来たのだ」
お茶受けの豆大福をかじりながら先輩は言う。
「僕も一応受験生ですし、それっぽいことを始めようと思いまして。まずは神頼みをしようと」
その神頼みの大半は学業成就ではなく、家内安全ないしは無病息災――これから起こる地獄の、もしくは修羅場な勉強会が滞りなくつつがなく、何も無く平穏無事に終る事を祈るものではあるけれど。
「ほう。それは殊勝な心掛けだ。褒めてやろう」
褒められてしまった。
自分でああ言っておいて何だけど、普通、神頼みは勉強して勉強して勉強して――これ以上出来ないまでに勉強した後に、最後の手段的にするある種の通過儀礼だと思うのだけれど。
やはり先輩も神に仕え、神社に住まう巫女。どんな状況、状態であれ、参拝客は嬉しいしありがたいのかもしれない。
「だが、阿良々木。お前は運が悪いな」
不意に先輩は整った眉を曇らせ、心の底から同情したような顔を見せた。
「単刀直入に言おう。今、この神社には――大樹神社には御神体がいない。だから御利益など望むべくも無い。そういうことだ」
「そういうことだ、て……。大問題じゃないですか!」
淡々と、まるで明日の天気は晴れかしら雨かしらと世間話をするように、何でもないことのように話す先輩に、僕は思わず声を大きくしてしまう。
神社に取って御神体は心臓にして中枢部、神社そのものと言っても過言では無いはずだ。それがなくなったなんて……一大事にも程がある。
「それで犯人の目星はついているんですか?」
「犯人?」
勢い込む僕に、先輩は一瞬きょとんとした顔を返し、
「あ、ああ……そうか、そうだな。普通に考えればそうなるな」
と、一人納得しながら意味の分からないことを呟いた。
「ところで阿良々木。殺生石というのは聞いたことがあるか?」
「セッショウセキ? いえ、ありません」
素直に言うと、「ふむ、そうか」と頷き、先輩は説明してくれた。
『生』き物を『殺』す『石』と書いて『殺生石』。栃木県那須湯本温泉付近にある溶岩が一番有名らしい。……僕は知らなかったけれど。
この岩の近くから硫化水素や亜硫酸ガス、そして砒素などの有毒ガスが噴出しているらしく、近づく人や動物などを殺したことが名前の由来なのだという。
地形的なものを考えれば、なるほどと頷けるものだけれど、そういうことが判明していない、分からない昔の人が考えそうな名前だ。
これだけだったら、昔からある地方の観光名所になるのだけれど――昔からある地方の観光名所だからこそ、当然のことながらそれにまつわる逸話がある。
およそ九百年前の鳥羽上皇の治める時代。上皇に寵愛された玉藻前という博識で絶世の美女がいた。その玉藻前の正体こそ白面金毛九尾の狐という――怪異。この怪異は退治されると巨大な毒石に変化し、近づく人間や動物の命を奪った。その後、玄翁和尚という高僧によって打ち砕かれ、破壊された殺生石は各地へと飛散したと伝えられている。
「そのひとつがここ、大樹神社に祀られている。正確をきすなら奉ることによって封印していることになるのだが……」
都子先輩は言葉を切り、殊更に不安を煽るようにためを入れ――言う。
「その殺生石が――いなくなったのだよ」
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