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バッチリのせときましたよ日原さん!!
お疲れ様でした!

とりあえず無事一周ですね。
幸いこっちも夏休みに入ったところなので、しっかり書いて次のを作りますよ!

ではでは

またも新たな登場人物が通りかかる~

『こころソード003』!!

 今更の事かもしれないけれど、半吸血鬼半人間の中途半端などっちつかずな身体になったとは言え、僕の心はれっきとした男の子であるところの健全な男子高校生だ。漫画でパンチラがあればちょっと嬉しいし、当然エロ本だって買う。

 その程度には女子に興味を持つ阿良々木暦であり、彼女達が身に付ける下着には心を惹かれる僕ではあるのだけれど……だけどいざ、周りがそれしかないという状態に置かれると、どういうリアクションを取っていいのか甚だ困る。

 右を見ると乳パンツがあり、左を見るとブラジャーがある。前を見ればパンティーがあり、後ろを見ればショーツがある。地味なものから派手なもの、シンプルなものからセクシーなもの、白から極彩色までありとあらゆる女性用下着が上下セットになって所狭しとハンガーに吊るされたり、マネキンに装着されていたりするのはある意味で壮観な眺めだ。

 こういう店に来ることなんて、これからの僕の人生においてはきっともう絶対に訪れることのないことだろうから、しげしげと眺めて堪能したいと最初は思った。でも……出来なかった。

 何と言うか目が怖いのだ。周りの視線が痛いのだ。

 当然の事ながら、僕を除けば店員も客も全員女性だ。その彼女達の僕を見る目が変態とか、変態とか、変態とか。そんなことを囁いている気がしてならない。そんなことはないと、自意識過剰な反応だと分かってはいるんだけれど、見も知らない双子とか、羽川に言われた後だけにこの妄想とか幻想が心に染み付いて離れない。くそう、僕の右手が幻想殺しであったなら……まあ、きっとどうにもならないんだろうけれど。

 そんな訳で。店から出るまでの小一時間、僕は借りてきた猫のように静かに羽川の後ろに付いていたのでした。

 あ、今思ったんだけれど。これって新手のいじめだったのかしら?


 何やら気に入ったものが買えたらしい羽川はご機嫌で、店を出てからずっとにこにこしていた。

 ちなみに、どんなものを買ったのか僕は知らない。何着か試着をした後に決めたようだけれど、どんなのを選んで何を着たのかまでは分からない。

 何はともあれ、羽川の機嫌が良いに越したことは無い。女の子にはいつも笑っていて欲しいと素直に思うしね。

 羽川の買い物も終わった今、小腹の空いてきたこともあって、どこかで食事でも取ろうと手頃な店を探しながら歩いているのである。

 その時だった。背後から『たっ、たっ、たっ、たっ、たっ、たっ、たっ』と、これ以上ないぐらいに規則正しい足音が近づいてきた。

 この足音の主を僕は知っている。跳ぶような、跳ねるような足音を伴って現れる者。それは――紛れも無く奴さ! ……左腕に秘密があるのも一緒だし。

 今日は何かと、まるで伏線ですと言わんばかりに過去の再現が多いのは気のせいだろうか? 

 だからという訳ではないけれど、嫌々の渋々でもないけれど、ゆっくりと身体を捻ったときに――彼女は、跳んでいなかった。

 それどころか姿さえなかった。目の前に広がるのは今まで歩いてきた道と、幾ばくかの通行人だけ。

 あれ? もしかしてあれは幻聴? それともまったく別の人だったのか?

 不思議に思って首を傾げながら身体を元に戻す。

「やあ、阿良々木先輩。奇遇だな」

「うわぁ!」

 思わず僕は身体を仰け反らしていた。尻餅をついてしまうんじゃないかってくらいに傾いた身体をなんとか踏み留まらせる。

 目の前にいたのは神原駿河だった。そのあまりに唐突な登場に、僕は目を大きく開くだけで言葉が出てこない。

「おお! さすが阿良々木先輩だな。憎い演出をしてくれる」

 神原はそう言って、なぜか嬉しそうな顔をした。

「私が阿良々木先輩の振り向く死角を利用して目の前に現れることなどお見通しだったのだろう? それなのにさも意外そうに振舞い、私ががっかりしないようにしてくれるとはさすが阿良々木先輩だ。そんなふうに気遣うことが出来る人間がこの世界にどれだけいるだろう。いっそのこと全人類、阿良々木先輩の爪の垢を煎じて飲むべきだな」

 腕を組み、うんうんと一人納得する神原だった。

 振り向く死角を利用して前に出た……だって? カップラーメンの作り方を話すみたいな口ぶりで言うけれど……それにどんだけの瞬発力がいるんだよ。反転する身体の遠心力を制御したりする身のこなしだっているだろうし……相変わらずずば抜けた運動神経の持ち主だ。もうバスケ部を引退し、指導だけにあたっているなんて話を聞いていたけれど、さすがにスターたる所以のその性能は全然衰えていないみたいだ。

「ところで、阿良々木先輩はこんなところで何をしているのだ。しかも戦場ヶ原先輩ではない女子と一緒に」

 不審そうな目で、僕を――というよりは羽川をじろじろと眺めながら神原。

「ああ、ちょっと買い物に付き合っててな」

 どこの店で何を買うのに付き合ったのかは話さず、そう言いながらふと思い出す。そう言えばこの二人、初対面ではないだろうか。羽川は我が校のスターたる神原のことを知っている(しかも彼女からは神原との付き合い方について注意されてもいる)けれど、面識はないはずだし、神原の方も羽川の事は知らないと言っていた。

 二人とも戦場ヶ原と一緒に僕の勉強合宿に付き合うメンバーなのに、お互い会った事がないというのも奇妙な話だ。まあ、神原は戦場ヶ原と僕がいるのならどこに行こうと、誰が一緒にいようと関係ないだろうし、羽川も僕の勉強の助けになるのなら場所や参加者は気にしないと言っていた。

 これはちょうど良い機会かもしれない。当日になって紹介されるより、少しでも前に知っておいた方がいいだろう。

 なので、僕は羽川を紹介しようと口を開こうとした時だ。

「ああ! そういうことか阿良々木先輩! これは失礼を……いや、邪魔をしてしまったな」

「? 何が邪魔なんだ?」

 突然に何かを発見した科学者のような大声をあげる神原に、僕は眉をひそめた。

「さすがは阿良々木先輩だ。まさかまさか、そんなことを実践し、実行していたとは……! 今さらながらこの神原駿河。阿良々木先輩の器の大きさに恐れ戦き、己の卑小さを矮小さを再確認してしまうぞ!」

 なんだなんだ? こいつは何を一人で興奮しているんだ? またいつものように間違った何かを間違った方向に勘違いしているんじゃないだろうな?

「難易度最高ランクのツンデレキャラ、戦場ヶ原先輩を攻略した次の攻略対象が委員長キャラである彼女なのであろう? 阿良々木先輩はリアルでハーレムエンドを目指す、マルチエンディングシステムを己の人生に採用しているのか……!」

「人聞きの悪い事言ってんじゃねぇー!」

 それはある意味すっごい理想的な人生なのかもしれないけど! でもそれって現実的な意味で言ったらただの最低野郎ですから!

「ならばここで私と会ったのも偶然ではないのだな? 必然足らざる偶然は無いし、この世の全ては必然だという言葉もあるくらいだしな。さあ、阿良々木先輩。可愛い後輩との遭遇イベントだぞ。私の阿良々木先輩に対する好感度は既にMAXだが、私の初期設定はスポーツ少女だからな。もう少し運動系のパラメーターを上げ、個別ルートに入ればエンディングまでまっしぐらだ。『放課後』に『体育館』で『二人でシュート練習イベント』が起これば私の個別ルートへ突入だ。ああ、待ち遠しいぞ。阿良々木先輩が私を攻略してくれる日が!」 

 いや、そんな夢見る乙女な顔で言われてもな。そこまで妄想垂れ流されると、突っ込む前に引いてしまうじゃないか……

「それではな、阿良々木先輩。これで私は失礼する。委員長ルートに入っているのなら、他の女子との好感度を上げてはいけないからな」

 神原は礼儀正しく頭を下げると、くるりと惚れ惚れするくらいに優雅に綺麗にターンして、『たっ、たっ、たっ、たっ、たっ、たっ、たっ』と小気味良い、一歩ずつ跳ねているような、一歩ずつ跳んでいるな特徴的な足音と共に去っていき――あっという間に背中が見えなくなる。

 ……結局、今までの一連のやり取り――と言うよりは神原が勝手に勘違いした事をべらべらと喋っていただけだけれど――は一体なんだったんだろう? 二人を紹介するどころか、どうしてこんなところで出会ったのかすら話す事が出来なかった。

 神原の妄言は今に始まった事ではないけれど、今日のは少し違っていたように思う。なんというか、モノ書き志望が原作者の作風を真似て書いた、みたいな? それとも神原は何かのギャルゲ-にハマッているのかもしれない。もしかしたらあれが巷で評判のゲーム脳って奴か?
 
「あれが神原駿河さん……?」

 羽川が確認するような、半信半疑な口調で呟いた。

「なんか、様々な意味で噂で聞いてたり、イメージしてたのと違う人みたいね」

 神原の噂は本人自らが意図的に色々に脚色して流布していたから違うのは当然なんだろうけれど……女子バスケ部を全国にまで一人で押し上げた元スターが、まさかああいう性格だとは想像つかないのも当然だろう。でもまあ、今日はまだマシな方だ。百合でBLでネコで受けでロリでマゾが本性なんて知ったらもう、なあ……

「まあ、それはそれとして阿良々木くん」

「ん?」

 呼ばれたのでそちらに顔を向ける。

 ――笑顔だった。これ以上ないってくらいの、どんなに頑なな人の心も開かせるんじゃないかと思わせるくらいに完璧な笑顔。ただ――目が笑っていたのなら。

 ひぃぃぃぃっ! 怒ってる、怒ってるよ! なんで!? どうして!?

 僕、なんか悪い事したの!?

「攻略って、何の話?」

 ずずい、と顔を近づけてくる羽川。普段なら顔を赤くしてドキドキしちゃうくらいの距離なのに、今は顔を青くしてドキドキしちゃう僕だった。

「ふーん、そう。阿良々木くんはそういう人で、私のことをそういう風に思ってたんだ。ふーん、そうなんだ」

 ……もしかして、神原の発言を真に受けていらっしゃるのでしょうか……? そして僕がどうしようもないたらしで、戦場ヶ原という彼女がいるにも関わらず、羽川を篭絡せんと画策している、と…… 
 
「ご、誤解だ。羽川! あれはなんと言うか……そう、神原流のジョーク。冗談だよ! や、やだなぁ、羽川さん。僕にそんな甲斐性も度胸もないことくらい知ってるだろう?」

 ……言ってて悲しくなってくる台詞だった。しかもその通りで紛う事の無い事実なのがもっと悲しいよなぁ……

「…………まあ、いいわ」

 心の中で情けなさのあまりに涙を流すくらいの僕の誠意が通じたのか、羽川は顔を離してため息をついた。

「そういうことにしておいてあげる。下着屋さんとか、今とか。あんまりいじめちゃかわいそうだもんね」

 くすりと羽川は笑うと、「さあ、行きましょう」と言って歩き出す。

 羽川の機嫌が直って本当に良かった。これ以上、僕の信用度とか好感度が下がったらバッドエンド一直線だ。

 そんなことを思いながら羽川の後に続いた僕だけれど、ふと、今の羽川の台詞がひっかかった。

『下着屋さんとか、今とか。あんまりいじめちゃかわいそうだもんね』

 ということは何か? あの店は、やっぱり僕へのいじめだったのか……? もし、仮に。本当に、そうだとしたら……むう、羽川翼。本当にいい性格の奴になってしまったのではなかろうか?

 男子三日会わざれば刮目して見よ、とはよく言うけれど、毎日見てても女子は変化していくものらしい。

 季節外れも甚だしいけれど、まるで秋の空のように――気まぐれな猫のように、変わっていくのかもしれない。

 漠然と、ぼんやりと思いながら、僕は夕方だというのにまだまだ明るい道を羽川と並んで歩いていくのだった。

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COMMENT : 無題
 こんにちは。

>ナギさん
 更新お疲れさまです。えへへ、神原書いちゃいました。マニアック(?)に撫子でも出そうかと思ったんですが、やっぱり王道(?)は神原かなぁ、と思い直したのですよー。マルチエンディング~はどうなのか結構ドキドキしてたんですが、気に入ってもらえた様で何よりでした。
 これの続き、楽しみにしてます。

>針山さん
 いえーい! 普通に笑われたぜぃ! 
 選択肢によっては試着室で着替える下着姿な羽川のイベントグラフィックが回収出来ていたとかなんとか、そんな話があったりなかったりするのは秘密です。

日原武仁 2008-07-23(Wed)12:03:25
COMMENT : 無題
神原語り普通に笑ってしまったwww
やばいやばいやばい、これもあれです。自分もうここで降りてもいいですか?という感じです@@;
とりあえず阿良々木は下着ルートをかいして羽川ルートまで行って好感度を上げたということですね…え?違う?(笑
針山 URL 2008-07-22(Tue)23:23:08
COMMENT : や、やられたぜー?!
や、やられたぜー?!
神原駿河ちゃんっー! 俺がやりたかったのにー! その上うまいんだ神原語りが! 脱帽!

マルチエンディング~あたりの語りがやたら面白かったです!
 
日原め~、かなぁり気合を入れおったなー

負けませんぞー!!
ナギ×ナギ 2008-07-22(Tue)13:52:34
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